漆黒の黒般若

部屋に入ると山南さんと佐之さんがもう居た


“例の件”とは多分芹沢さん暗殺のことだろう


この間彼の右腕的存在だった新見は局中法度を破って切腹をした


まぁそう仕向けたのは他でもない僕たちなんだけど…

着々と進んでいく暗殺計画。ついに近藤さんが目指す壬生浪士組が出来上がるんだ


そう思うととても嬉しくなった


しかしその喜びは土方さんの言葉によってかき消される


「決行は明日だ」


「明日っ?!」


僕たちは顔を歪める


「なんだ、明日は何か問題か?」


「いや、なんでもねぇ…」

土方さん以外の3人は皆肩を落とす


そう、明日は楠葉の誕生日だった…



「明日芹沢率いる水戸派の奴らが島原で新見の弔い宴会を開くという情報を山崎がつかんできた。そこでだ、酒に酔って帰ってきた芹沢を長州の仕業に見せかけて八木邸で殺す。わかったな?」



「はい」


部屋に響く会話は楠葉ちゃんの誕生日会の中止を示していた


あんなに喜んでたのに、今更なんて言えばいいのさ…
土方さんの馬鹿野郎


しかし、これも近藤さんの目指す京をつくるため

そう思い僕は部屋を出た


山南さんや佐之さんもがっかりした様子だった


「楠葉さんにはこのこと私から言いましょう」


山南さんはしょうがないと言った顔で歩いていってしまった


今度楠葉ちゃんにはおだんごでも買っていってあげよう


とにかく今は芹沢さんのことに集中しなくちゃ


芹沢鴨は元から武士でその腕前も凄い


いくら土方さんと僕が殺しにいっても返り討ちにあってしまうかも…


ふと、見上げた空は血のように真っ赤に染まっていた

まるで僕の今までの人生を表すように