漆黒の黒般若

「明日は楠葉ちゃんの誕生日だね」


洗濯物を干していたあたしを縁側から眺めているのは沖田さんだ


「はい」


「山南さんと平助はなんだかあわただしく動いていたけどなんかあるのかな?」

「はぁ…、沖田さん」


「ん?なぁに」


「またサボりですか?」

あたしの後ろで縁側に寝転がりながら沖田さんは何かを読んでいる

「だってめんどくさいんだもん」


沖田さんは唇を尖らせて足をばたつかせた


小さい子供のようだ
彼は本当に二十歳なのだろうか?

どうせあたしが何をいっても駄目なことをわかっているのでこの前のような反論はしなかった


「沖田さん、なに読んでるんですか?」


洗濯物を干し終えたあたしは沖田さんの横に腰を下ろす

先程から沖田さんの笑いを産み出しているその本には“豊玉俳句集”とかかれている


「これのこと?読んでみる?」


笑いすぎで涙を浮かべながら沖田さんはあたしにその本を手渡した

中身は俳句集のようだった

あたしは目に止まった句を読んでみる

「梅の花、一輪咲いても梅は梅…」

読み終わったあたしの頭にはハテナマークが飛び回る

「なんですか?この俳句?」


「あはははっ、それ書いた人と僕知り合いなんだよねー。どう思う?」


「えっ?どうって…。見たままと言うか、深くないというか…」


「総ー司ーくーん…」


振り向くと仁王立ちの土方さんが立っていた

その顔は気のせいかあたし達をにらんでいる

いや、正確に言うと見ているのはあたしの持っている本だ


「あの、沖田さん…。あたしの思い過ごしかもしれないんですが、もしかしてこの俳句かいた豊玉さんって…」


「俺だ」

「沖田さぁん!!」


「楠葉ちゃん逃げるよ!」

「待てお前らー!」