「ど、どちら様ですか?」 閉まった襖の前には、黒い人影。 行灯で照らされるだけだから、顔まではっきりとは捉えられない。 判るのは、少し小型な男の人って事。 シルエットが私に近づいてくる。 「来ないでください!」 なに、この人! 布団に腰を落としている私と、彼の距離は一メートルもなかった。 ここまで近づくと姿形が見える。 闇に紛れるような、真っ黒の衣装に全身包まれて、マスクの様な物を被って目だけを覗かせている。 切れ長の、鋭い目。 怖い。 不安が私の心を侵食していった。