「うわぁーん!!」

彩夏は肩を上げ、時々しゃくりながら、両手で目を拭いだした。
顔を涙でくしゃくしゃにし、この世が終わるんだと覚悟したように泣きじゃくっている。

その騒音は赤ん坊にも勝っていたと思う。




ここは路地、近所迷惑






久遠は泣きじゃくる赤ん坊の対処に戸惑っていた。
すると



キキー…



遠くで自転車の止まる音がした。
まだ遠いが、こちらの様子を不審そうに探っている。


パトロール中の警官だった。


薄暗い中でもそこまでわかるのは久遠の目が異常に良いからだ。


――ちょうどいい
パトロールの人に彩夏を預ければ全て終わる
彩夏が騒いでくれたおかげでお泊りなんてなさそうだな。


自業自得
そんな言葉が頭をよぎった。



彩夏はまだ泣きじゃくっている。

久遠はパトロールの人に手を振ろうとした。


その時


「だずけてよ〜!!」


彩夏がまた大声で懇願する。
事情が変わった。