学校の裏に人知れず小さな池がある。 その池の向こう側の枝垂桜の下が彼の特等席だった。 いつもその下にポツンとあるベンチに寝転がっていた。 学校をさぼっている時は、十中八九そこにいた。 病院を抜け出した時は必ずそこにいたと言っていい。 それぐらい彼のお気に入りの場所だったのだ。 そこは。 だから、必死に足を動かす。 絶対そこに翔はいるはずだから。 いないはずがないから。