「前の美月はもっと天真爛漫で、ワガママで……“フリーダム全開!!”って感じだったのに」
「フリーダム? 何それ」
私のそんな問いかけを無視した結衣は、力強い口調のまま話を続ける。
「それなのに、付き合う男に合わせて大人ぶってさっ!」
「そ、そんなこと……っ」
「そんなの美月らしくない! 可愛くないっ!!」
否定しようとした私の言葉を遮って、そう言い放った結衣は、店員さんが持ってきたお代りを一気に飲み干した。
“らしくない”
自分ではそんな事、全く意識した事はなかった。
だけど、その一言が妙に引っかかるのは、どこかで自覚があったからなのかな。
「そんなに、らしくないかなぁ?」
でも、ずっと傍で私を見てきた結衣が言うんだから、それは強《あなが》ち間違いではないんだと思う。
「そもそもさー、美月は何でそんなに年上ばっかりなの?」
そういえば、何でだっけ?
多分中学生くらいから、ずっと“年上がいい!!”と言い続けてた気がするけど、改めて聞かれると理由が思い出せない。
「多分……甘えたいから、とか?」
自分の事なのに疑問文になってしまうのが何とも情けない。
「あんた、いま甘えられてないよね?」
「……」
「大体さぁ、こんな事言いたくないけど……。秀君、ちょっと変じゃない?」
「えっ!? 何それ!!」
それはちょっと失礼だろうと、理由も聞かずにムッとした私に、結衣が口にした言葉は思ってもみない言葉だった。
「秀君って、ホントにそんなに実験してんの?」
「は?」
「うちの兄貴も大学院出てるから、忙しいのはわからない事もないけどさぁ」