「なぁ、航太ぁー! いいじゃんかぁー!!」

「お前、マジでいい加減にしろよ……」

さっきから何度も何度もお願いしているのに、航太のこの態度はどうなんだ!!

電話越しの航太の言葉に、俺はつい唇を尖らせる。


「親友だろー!?」

「あ?」

「……」

「……」

いいんだぁー、別に。

慣れてるからさぁー……って、今はそれどころじゃない!


「いいじゃんか! 減るもんじゃねーだろー?」

「つーかさ、」

かれこれ二十分も近く粘り続ける俺の耳に、航太の盛大な溜め息が聞こえた。


「俺の言葉でプロポーズしたって、美月さん喜ばねぇだろ」

「んな事わかってるよ!!」

「じゃー、別に俺のプロポーズの言葉なんて聞かなくていいじゃねぇかよ」

「……」


そうなんだ。

美月ちゃんがイギリスに来てくれてから約一年経って、この前のフロントとの話し合いで、やっと完全移籍が決まった。


ここまでずーっと、笑いながら俺の隣にいてくれた美月ちゃんに、やっとプロポーズが出来る――そう思って、一人喜んだのも束の間。


“何て言ったら、美月ちゃんを最高に喜ばせられるんだろう?”

湧き上がったのは、そんな疑問。


だって、俺は彼女の事を世界で一番幸せにしたいから、どうしても美月ちゃんがイッッチバン喜んでくれる言葉を贈りたい。