「……」

その言葉に、どう反応すればいいのかわからない私は、思わず黙り込む。

だけど、そんな私の瞳を真っ直ぐ見据えた杉本マネージャーは、

「あれから、電話くれるかなーって、ちょっと期待してたんだけど」

頬杖をつきながら、そんな言葉を口にした。


“電話”っていうのは、あの名刺の裏にあったプライベート携帯への電話という意味だというのは理解出来るんだけど。


「あ……の」

「うん?」

何でそこに電話がかかってくるのを、杉本マネージャーが待っていたのかがわからない。

だけどそんな思考から、少し遅れて私の頭に浮かんだのは、結衣の言葉で……。


「すみません」

「ん? 何の“すみません”?」

少しキョトンとしてそう言う彼に、言葉に詰まる。

そうだよね。

確かに、何の“すみません”だって話だよね。


多分、結衣の言葉のせいで、私の脳裏に浮かんだのは、“彼氏がいるので、すみません”という言葉。

その信じられない程の自惚れに、顔がカッと赤くなる。

仮にも相手は“結婚したい男性社員No.1”。

これも結衣が変なこと言うから!


頬に手を当て俯いた私に対してなのか、独り言なのか「うーん」と唸った杉本マネージャー。

思わず顔を上げた私をじーっと見て、笑いながら言ったんだ。


「“打てど響かず”って感じだな」

「……はい?」


う、打てど……?

さっぱり意味がわからなくて、ちょっと首を傾げる。


「いや。俺、それなりに態度で示してるつもりなんだけど」

そう言うと、私の表示読むように、やっぱりどこか困ったように笑った。


「……」

「佐々木さん、俺ね――」

何となく微妙な空気に気づき始めた私に、杉本マネージャーがもう一度口を開いた瞬間、


~♪~♪♪~♪~

「……っと」

彼の携帯の着信音が、二人きりの部屋に響いた。

仕事の電話だったらしく、私に「ごめん」と一言声をかけて電話に出た彼の横顔を、思わず見つめてしまう。