一緒にいる時間が長ければ、何かあった時に、その経験から対処出来るのかもしれない。
だけどそれがなかったら、どうすればいいのかもわからずに……。
そのまま関係が壊れてしまうんじゃないかって――そんな風に思ってしまうと、たまらなく怖くなる。
でも逆に、ずっと付き合っていたのに、急に離れる事になった方が辛いのかな?
「うーん……」
思わず唸った私を見て、目の前の結衣は、ちょっと困ったように顔を顰め、
「でも、“一緒に行こう”とは言ってくれなかったんだね」
人の傷をグリグリ抉《えぐ》る。
「それ、言っちゃうんだ」
「あ……」
“あ……”じゃないしね。
「私が一番気にしてる事、ペロッと言っちゃうんだ」
「ご、ごめん。ごめんね!! いや、ホントに!!」
机に突っ伏した私に、結衣は必死に謝ったけど、そう思うのはきっと仕方がない事。
「ううんー。だって、本当の事だし。まだ付き合い始めたばっかりの相手に“一緒に行こう”なんて、普通は言えないでしょ」
責任感の強い稜君であれば、なおのこと。
「それは解ってるんだけどさぁー……」
頭ではちゃんと理解しているのに、心が上手くそれに追いつかない。
今のこの状況におかれているのが私じゃなくて、他の友達だったとして。
その子が「付き合ってすぐの彼氏に、海外に一緒に行こうって言われたんだけど」なんて相談してきたら……。
きっと「自分で決める事だけど、一年待ってみてもいいんじゃないの?」とか、偉そうに言っちゃうと思うんだよね。
「はぁー……」
さっきから、出るのは溜め息ばっかり。
「――あれ?」
「んー?」
「美月、携帯鳴ってない?」
結衣に言われて耳を澄ますと、確かに、私の携帯の着信音が鞄から聞こえている。
「どこだぁー!?」
鞄をガサゴソ漁って、取り出した携帯電話。
「……」
「稜君?」
「うん。……ちょっとごめん」
頷いてまたカップに手を伸ばした結衣から、視線を携帯に移し、通話をタップした。