「それにしても、会費なしってどんだけ太っ腹なの?」

おねぇーに、形ばかりの受付を頼まれた私達。

ただお店の入口で、来た人の名前をチェックして、荷物を預かって、店員さんにクロークに入れてもらう。

それだけのお仕事。


「あの二人、ホントに人に気を遣うからさぁー。胃炎とかにならないのが不思議なくらい」

今回のこの二次会だって、みんなの負担になるからって、本当はやらないつもりでいたらしい。

だけど、周りの人達が“せっかくだから”と企画してくれて、結局やる事になった。


本人達は言わないけど、多分、いや……絶対におねぇーと航太君がみんなの分の費用を負担しているわけで。

あの二人は、信じられないくらい周りの人を大切にしていて、だからきっと、周りの人達もあの二人を大切にするんだろう。


どこかボーっとしながら、そんな事を考えていた私に、隣の結衣が何やら興奮した様子で耳打ちをしてきた。


「ちょっと美月っ!!」

「ん?」

「あの人、誰っ!?」

結衣が向ける視線の先には……翔太さん。


「あー、航太クンのお兄さん」

「はっ!? マジで!?」

「……嘘、吐いてどうするのさ」

「いや~ん! かっこいいっ! 目の保養!!」

そう言って、隣でしなしなしている結衣。


やっぱりあの人は、独特の何かを醸し出している。

物腰の柔らかさもそうだし、あの表情なんかも。

その様子を観察するように眺めていた私の前に、ゆっくりと歩いてきた翔太さんは「受付お疲れ様」と言って、にっこりと微笑んだ。