蒼の王国〜金の姫の腕輪〜

‡〜怪しい者〜‡

街道の脇、木立に隠れるようにして、一人、異界からの来訪者である二人を付かず離れず追う者がいた。
なぜ見つからないのかわからない程、鮮やかな桃色の髪の毛、服も黄や橙、朱色といった目につきやすい色合いの物だ。
長閑なと形容される緑の多い景色の中で、明らかに異様な様子であった。
もっとも異様で奇妙な事と言えば、その派手な格好で発せられる言葉だ。

「っ〜派手な術だったわね〜ぇ。
一体なんだったのかしらん?
でもでもぉ〜そんなことよりもあの二人よねぇぇぇ。
うふふっ、ホントにイイ男〜ぉ。
カレシにしたいわ〜ぁ。
あっちは旧カルナの方よねぇ?
いいわぁ〜、久しぶりに甥っ子ちゃんの顔でも見にいきましょ。
あっ報告、ホウコクぅ」

一人で盛り上がり、独特の言葉で語られる様子は、はっきり言って変な人である。
そのユルい言葉と顔を一瞬封印し、言葉飛ばしの術を発動させる。

〔ラクウ・シル・バリ〕

目の前に鮮やかな白い光で描かれた小さな魔法円が浮かび、途端に前のユルい言葉がその魔法円に向かって紡がれた。

{イイ男二人わぁ。
旧カルナに向けてぇ出発したよんっ◎
あとつけてぇ☆
ついでにぃばびゅっとマリスちゃんに会ってくるねぇ◎◎◎}

言い終えると、サッと手で魔法円を撫でるように触れれば、光の玉となって空高く舞い上がり、流れ星の様に飛んでいった。

「っよし完了ぅ。
我ながら、毎回ステキに優秀なホウコクじゃなぁい?
パパに褒められちゃう☆
それにしてもぉ、気になるわぁ。
あのちっちゃいボクは何か私の知ってる子みたいな感じがすんのよねぇ?
あんなカワイイ子、一度会ったら絶対忘れないと思うのになぁ◎
まぁ、たっぷり時間はあるしぃ、ゆっくりじっくり思い出せばイイわよねぇ?」

印象通りの軽くていい加減な結論を出し、一定の距離を保ちながら旧カルナへと足を進める。
その足取りは軽く、軽快だ。
見つからないように慎重にという様子はない。

「マリスちゃんと会うのは十年振りくらいかしらん?
甥っ子じゃなければ狙ってたのになぁ。
あの無駄にツンケンした感じがまたイイのよねぇ〜。
世を拗ねた感じがカワイイわぁ。
っんん?
返信ん?」

キラキラと飛んできたのは、先程送ったものと同じ光玉だった。

〔レリナス〕

{フェリスが出奔。
見つけ次第確保されたし}

「あらん?おねぇちゃん?」