‡〜呪われた生〜‡

この世界に生まれたのはこれで五度目。

私には記憶がある。


転生。


私には呪いでしかない輪廻の輪。


私は忘れる事ができない。

印象的な出来事だからではない。
日々起こる全て、他愛もないものまで全てを記憶してしまう。
あの花はいつつけ枯れ落ちたか。
読んだ本の何ページ何行目の文字で名を呼ばれたか。
一日であの人はどんな事を話したか。
そんな細かい所まで記憶してしまう。
だから、自分で忘れても良い情報を整理しなければならない。
いつでも、脳が覚醒した状態を保つから、眠る事さえ簡単にはできない。
眠れたとしても、完全に昏睡するか、過去の見たくもないシーンを夢と言う形で見る事になる。
休まる事を知らない私の頭は、生まれてから七つをまたぐ時に覚醒する。
それまでは、普通の人々と変わらない。
五度転生して五度とものようだ。
そう、このやっかいな頭は、初めの生から、全てを覚えてしまっているのだ。
前世と呼ばれる生の記憶を、今でもリアルに”覚えて”いる。

だから夢を見た。
忘れたくても忘れられない記憶。

最初の私が最期を迎える日の記憶。

その夢を見た日だけは、一日中頭がはっきりとしない。
うつらうつらと夢へと導こうとする。
眠れるのだと思えば、夢を見る事がなければ歓迎するのだが…。
夢を見れば、精神を削られてしまうのだ。

お気に入りの東屋で、夢に入る前までを行き来しながら、今日一日を過ごす。
夜には祖父の誕生会がある。
大きな財閥の会長特有のパーティーだ。
社交の場が苦手な私としては、参加を遠慮したいが、少し前まで病気療養をしていた祖父が久々に顔を出す。
欠席は出来ない。

だからせめて、あの人が探しに来てくれるまで…。