蒼の王国〜金の姫の腕輪〜

‡〜最後の日記〜‡

―3風ノ月28日―
後悔ばかりの日々だった。
国が滅び、私や数名の者が生き残った。
あれほど願った国の終わりに、今は悲しみばかりがこみ上げる。
あの様な最後を迎えた姫を、誰が救えるだろうか…。
ただの一度もあの方の本当の笑顔を見ることができなかった。
すべてを背負わせてしまった。
まだ十八。
あの国を再建し、王になってもらいたかった。
いや、これはわがままだろう。
あの方もお辛かったのかもしれない。
そのお心を理解せず、何と愚かな臣であった事か…。
もし再び会えるのならば、全身全霊をかけてお守りし、二度と一人にはしまい。

今日、エルフの王に提案された事を明日お願いしようと思う。
彼らや多くの魔術師達によって姫のご遺体は美しいクリスタルの棺に封じられた。
傷も治し、生前そのお姿を”蒼き風の君”と呼ばれた美しさをそのままに、ただ安らかに眠っておられるようだ。
どうか心安く。
このような辛い試練を与えるこの世界から離れ、穏やかな眠りを…。
明日、ミラと数名の有志の者達と共に異界へと旅立つ。
私のような老人では長く見守る事はできぬであろう。
騎士であったミラが姫の墓をお守りしましょう。
異界の土地では居心地が悪いやもしれませんが、次に転生するのがこの世界ではないように。
もし前世の記憶を持ったまま転生なさったら、この世界ではお辛い思いをするでしょう。
だからどうか新たな土地で穏やかに…。
我が最愛の姫の、次の一生が幸福でありますように…。