那月君は何も話さなくなり、沈黙が続く。 手当てが終わると「じゃ、帰るわ」の一言。 「わ、わかった」 あたしは焦った声で返事をし、那月君を玄関まで送る。 「天野さん、メガネのこと誰にも言わないでくれるか?」 「もちろん!秘密の一つや二つ、誰にでもあるもの」 那月君は小さく頷くと、 「じゃ、ありがと…」 と言った。 控え気味に言った『ありがとう』だったけど、とても嬉しくなった。 「じゃあまたね」 「あぁ」 那月君は出て行った。