「これが、お前の答えなのか…」
楓が怒りを抑えた顔で、亜子に問う。
亜子の耳に声は入らない。

ー皆、裏切り者だ。
皆わたしを裏切るんだ。
誰も信用しちゃいけない。
絶対に。

「…はははっ」
葵が後ろで笑っている。
嫌いなもの同士が潰しあうのは見世物でしかないのだろう。
亜子は剣の向きを変えて、構えた。

「うっ!!」
油断しているすきに、葵をー刺した。
彼はそのまま美加と同じように倒れ込む。

ー分かるんだ…思い出した。
剣の使い方…太刀を。
亜子は剣を持ったまま、歩き出した。
その目には光が映っていない。
跳ねた血の色が、彼女の強さを物語っている。

「待て亜子!!」
医療班に治療された龍が亜子を呼び止めた。
亜子はゆっくりと足を止めた…。

「確かに…お前は敵だ。だけど俺は、今はちゃんと!!」
「何が仲間だよ…」
亜子は憎しみに満ちた怒りで拳を握る。
今までに無い絶望感が体を覆いつくしていた。

「わたし…大好きだった。龍様のことが」
「…!!」
龍は何かをこらえるように、目を瞑った。
亜子は更に続けた。

「だけど、騙されてたなんて…嘘だったなんて…」
たまっていた思いが爆発した。

「大ッ嫌い!!!!」
ーズキン。
亜子も龍も、胸が張り裂けそうなくらい痛かった。
そのまま指輪を抜き取り、地面に投げてから、亜子は走った。
龍は追いかけようとしたが、腹部が痛くて座り込む。
「…違う…!!亜子…っ!!う…うぁぁぁあ…!!」




ーさようなら。