糖度∞%の愛【編集前】



「あー、五月女帰っていいぞ。 美崎さん、どーぞこいつ持ち帰っちゃってくださいー」


まるでこうなるのを分かっていたかのようなタイミングで、彼方の同僚の声が背後から聞こえてきたけれど、私は足を止めることなく「お仕事中失礼しました」と一礼して彼方の部署を後にした。


カツカツと静かな廊下に私の歩く音が響く。


ここに来たときは一緒に食べれることとか楽しみにしてきたのに、正反対の気分で帰っている自分に笑えてくる。

いや、彼方の怒りは間違ってないし当然の反応だけれど、ああやって暗に言うより表に出して怒ってくれた方がいい。

こちらから謝罪の言葉を口にしやすくなるし、素直に“つまんなかった”“彼方に会いたかった”と言えたのに。


こうやって彼方にああして欲しいこうして欲しいと思うってことは、それだけ彼方に甘えているということなんだろうけれど。


私が使った後に誰も使っていなかったのか、エレベーターはボタンを押すとすぐに扉が開いた。


それに一人で乗り込んで、一階へと降りる。

さっき髪を整えるために見た鏡がなんだかとっても恨めしくて、軽くパンチをお見舞いしてやったけれど心の中のモヤモヤは晴れることはない。