「もしかしたら、あの嫌がらせの犯人あの子だったりして」

「……否定できないけど、肯定できる証拠もないよ」

「そうだけどさ、あれだけ沙織一筋なあの男が急にあの子を近づけさせるなんて、それくらいしか考えられないんだけど」

「それでも、……それでも、私は彼方のそばに他の誰かがいるのは耐えられない」


そんな心の狭いことを考える彼女じゃ、彼方も愛想をつかしてしまうだろうか。


「あんた、それを素直に五月女に言えばいいじゃない」

「言いたいけど、話を切り出す前に別れを切り出されるんじゃないかって、怖くて」


チビチビお茶を口に入れながら言うと、「恋をすると変わるね、沙織も……」と、しみじみ言いながら真帆はコーヒーを啜った。

今までの彼氏は、自分がのめりこむ前に別れを切り出されてしまったりして、正直別れ話になっても「じゃあ別れようか」なんて言えていた。

でも、彼方とは始まる前からいつもとは違う感情があって、付き合っていくうちに予感通りどんどん彼方を好きになって、だからこそ今までのような淡白な関係でいられない。