「さおとめは、」
唇に五月女の指の感触を感じながら、なるべく唇を動かさないように声を出す。
ん?と少しだけ小首を傾げて、後ろに流していた黒髪が少しだけ前に落ちた。
それが何とも言えない色気を感じさせて、意味もなくゴクリとつばを飲み込んだ。
「なんで私を好きなの?」
「……、」
その私の質問に黙り込む五月女が不思議だった。
あれだけIDDMの私でも支えられるとか豪語しておきながら、根本的な質問には即答できないってどういうことなんだろうか。
「なんで?」と重ねて問う私に、五月女は困ったように前髪をくしゃりとして宙を見上げた。
「反則でしょう、それは」
「…は?」
ぽつりとこぼしたセリフに眉を露骨ひそめた。


