糖度∞%の愛【編集前】




だめだこりゃ。




溜息をついてキッチンにいるお母さんのもとへ近づく。
お父さんじゃ話にならないときは、お母さんに聞くのが確実だ。


「お母さん、どうしてお父さん結婚だなんて変なこと言い出し……」


キッチンに近づいて、リビングの入り口からは見えないキッチンの奥が見えた瞬間、私は一瞬自分が夢でも見てるんじゃないかと思った。





「お帰りなさい、沙織さん」


キッチンの奥。

コンロがあって換気扇もついている調理場で、フライパン片手ににっこり笑って言うその人は。


「か、か、か……」

「沙織、彼方君ってとっても料理上手なのね」


お母さん助かっちゃった、と語尾にハートマークでも付きそうにはしゃぐお母さんと一緒に料理している彼方だった。


「な、な、な、」


なんでいるの、という簡単な言葉さえ躓いて出てこない。
それほどまでにこの状況があり得ない。



彼方に実家の住所を知らせたこともなければ、そんな話もしたことないのに。

どうして彼方がこの場所を知っていて、その上お母さんと仲良く料理なんてしてるんだろう。


っていうか彼方、仕事はどうした仕事は。


てっきりメールの返信がないと思ったから仕事が立て込んでいるかと思ったのに、定時でまっすぐここに来た私より先についているなんて、彼方が一体いつからここにいるのか考えただけでも頭が痛くなる。