糖度∞%の愛【編集前】


ここから自宅までタクシーを使えばすぐだ。
私のアパートより自宅は近かったりする。


独り暮らしを始めたのが大学に入ったころで大学に近いところに住み始めたものの、案外居心地がいい上に立地条件も良くてしかも家賃も破格で築浅だったから、仕事場が遠くても引っ越しをせずにそのまま住み続けてる。

お父さんは顔を出すたびに実家に戻れってうるさいんだけれど、もういい年した大人だし今更実家暮らしも嫌だから一人暮らしをしている。


今日顔を出すのも久しぶりだ。 半年ぶりくらいになる。

タクシーの心地良い揺れに身を任せながら、流れていく街の光をぼぅっと眺める。


“結婚”……ね。

なんでお父さんが急にそんなことを言い出したのか分からないけれど、その言葉を聞いて思い出すのは彼方の告白の言葉だ。


結婚を前提に、そう彼方が言ってくれたから、私は心のどこかで少しだけ期待している。


彼方が私と結婚してくれればいいなって。


でもそれは自分からはとてもじゃないけど言えない。
恥ずかしいのもあるし、プロポーズは相手に言ってもらいたいっていう願望もあるし。

一番は、彼方はまだ若いから生涯を共にする相手をそんな早いうちに決めてしまって、後悔させてしまうんじゃないかと不安だから。


たった2歳の歳の差だけれど、されど2歳だ。

社会人としての2年の差は案外大きい。
そんな彼方に簡単に人生を決めるような決断をさせたくない。