聞こえてくるお父さんの声は、真面目な声でとてもふざけてるようには聞こえない。
そもそも、お父さんは冗談を言うような性格じゃないし、そんな冗談のためだけに会社に電話をかけてくるようなことはしないだろう。
そんな普段のお父さんならするはずのない行動をするくらい、結婚ということに驚いてしまったんだろうけど……。
「……その間違った情報は誰から聞いたのよ」
私はただ呆れて溜息まじりにお父さんにそう言ったんだけど、お父さんは何故か信じてくれない。
『お前なぁ、いくらなんでも結婚するってなったら真っ先にお前が言うのが筋だろうがっ』
「まあ確かに結婚するってなったらちゃんと私から言うわよ、でも結婚なんて私決まってないから言う必要もないでしょう?」
なんでそんなに私が結婚するって思ってるのか分からないけど、娘の言葉を信用してくれないお父さんにこれじゃ埒が明かないと直接会って話そうと決める。
「お父さん、とにかく最近顔も見せてないし今から行くから、詳しくそのデマを聞かせて」
言うだけ言って、まだ電話の向こうで騒いでいるお父さんの声を無視して電源ボタンを押した。


