「部長やみんなはとりあえず置いておくにしても、お父さんが急用じゃないのに会社に電話かけてきたうえに偽名使ってきたんだよ?」

「……ふぅん?」

「一応管理職についてたからそういう会社の常識っていうか、暗黙のルールっていうか、そういうのにうるさいと思ってたのになんか納得できないから余計に部長やみんなのことも変に思うのかもしれない」


言ってるうちに自分の中にある違和感の正体に気付いて結局は自分でそんな風に納得してしまった。


「なんだ、みんなが変なんじゃなくてお父さんの変な理由が気になって、私が変に勘繰ってただけなのかも」


うんうん、と自己完結しているうちに食堂近くのトイレに入って、その個室の中で恒例の血糖測定と今日食べる予定の分のインスリンを打つ。


トイレの入り口で待ってくれていた真帆と一緒に食堂に入って、注文したものを持ちながら空いている席を探す。


いつもなら彼方がどこかで席を取っていてくれることもあるんだけど、探しても食堂に目的の人を見つけることが出来なくて、お昼を食べれないくらい忙しいのかもと思いながら空いている席に真帆と座った。


「……沙織ってさ」


から揚げを今まさに口に入れようと大口開けたタイミングで切り出されたから、「ふぁ?」と間抜けな声が出てしまって、食べなよと真帆に促されたから素直にから揚げを口に入れる。