そんな彼方がとっても可愛……。




「わー、ストップストップ!!」


私が一人で考え込んでいるうちに、彼方は自称内科医に馬乗りになって拳を振り上げていた。

慌てて止めに入っても、彼方は私の方を見ずに下に横たわる男を射殺しそうな眼差しで睨みつけている。

そういうワイルドな感じもかっこいいけど、やっぱりいつもの彼方の方がいい。


「彼方、こんな奴のために彼方が痛い想いする必要ない」


振り上げていた拳を両手で包み込んでそう訴えるのに、


「俺なんかより沙織の心を傷つけることを言うやつを許しておけないんです」


怒りのせいなのか少し震えた声で嬉しいことを言ってくれる彼方。


うん。
私には彼方がそうやって自分のことのように怒ってくれていることが、何よりも嬉しいからこんな奴に何言われようと平気なんだよ。


「とにかく、もう家に帰ろう。 で一緒にお弁当食べながら仲直りしよう」


私がまっすぐ彼方の目を見つめてそう言うと、やっとこっちを見てくれた彼方が一つ溜息をついて男の上からどいてくれた。


「今後一切俺たちの前に現れないでくださいね」


鋭い瞳で見下ろされながらそんな言葉を投げられた自称内科医は、滑稽なほど震えて床に這いつくばりながら出口へと一目散に逃げて行った。