彼方の方が多少大きいとはいっても、大して変わらない身長の、しかもウエイト的に言えば自称内科医の方が大きいのに、それを物ともせずに彼方は吹っ飛ばした。



「お前、これ以上沙織のこと侮辱するようなことを口にしたら、二度と表歩けないようなツラにしてやるよ?」



そして、この言葉づかいも耳慣れないものだった。


え、待って。

これ彼方が言ってんの?

どっかで見た目は子供頭脳は大人なあの探偵のボイスチェンジャーの蝶ネクタイ使って、真帆が彼方の声で言ってんじゃないの?


思わずキョロキョロと辺りを見回してみたけれど、照明の落ちたロビーは真っ暗で、人影すら見えないし人がいたとしても分からない。


なんてやっていても、私が彼方の声を聞き間違えるはずないし、なにより私の知らない一面を見ることが出来て嬉しいというのが本音だったりするんだけど。


彼方がこうやって丁寧な言葉を使わないと、とっても年相応に見える。

きっといつも丁寧な口調で余裕のあるような態度を取っているのは、私が年上だからそれに合わせて背伸びしているのかもしれない、なんて思ってしまったり。