「メールに書いた合コンにいた一人で自称内科医の方です」
「……名前は?」
「存じ上げません」
「どうしてここにいるんでしょう?」
「ひたすらシカトしても勝手に話しかけて勝手についてきて、入ってくるなって言ったのにそれも理解できなかったみたいですね」
名前を知らないと言った時点で、私のこの自称内科医への興味が全くないことがわかったのか、彼方の刺々しさが和らいだ気がした。
「“自称内科医”さん」
私の言葉を聞いた彼方は私から視線を外すとすぐに自称内科医の方へ向き直り、そう話しかけた。
案の定自称内科医と呼ばれたそいつは、「金田だ!」と名乗ってくれたけれど、正直興味もないし覚える気もない。
「いい加減、ここから出て行ってくれませんか? 警察呼びますよ?」
ここからは彼方の表情を伺い見ることはできないけれど、声の感じから言って彼方は静かに怒りを滲ませていた。
きっと聞いていたんだ、コイツが私に言ったことを。
さっき微妙な感じで私が出てきてしまったにもかかわらず、彼方は私のために怒ってくれている。


