「残念ながら沙織さんは俺のものなんで貸出不可です。 アンタに沙織さんは勿体ないですので、ご自分に見合った方を選ばれたらどうです?」


私と自称内科医の間に割り込むようにして、そういってくれたのは彼方だ。
手に鞄を持っているところを見ると、仕事を切り上げて追いかけてくれたに違いない。


さっきの私の大人げない態度を忘れたわけじゃないに決まっているのに、それでもこうやって私を守ってくれる彼方。


やっぱり、彼方以上の男なんて世界中のどこを探したっていないよ。



目の前の大きな背中に無性に抱きつきたくなって、でも今はそんなことしている場合じゃないよな、と我慢。



自称内科医を追い払って、それでさっきのことを謝って、それからだ。

うん、それまで我慢。



「沙織さん、この方はどなたでしょうか」



てっきり彼方が自称内科医を追い払ってくれると思っていたのに、彼方の矛先はあっさりと自称内科医から私へと向けられた。



え、そこでそうくる?

まずはこの自称内科医を追い払ってから、その話題にしない?