ニヤリ、と笑みを浮かべたその顔は、さっきの彼方の同僚と同じような笑みでいて少し違う。
これは相手を蔑んでからかおうとしている笑みだ。
小学生のころは、この視線が嫌で嫌で仕方なかったけれど今はもう何とも思わない。
こういう注射を打つという行為を受け入れてくれる人もいれば、そうでない人もいるのは当たり前で、それにかかわりを持ちたくないと思う人もいれば、嫌悪する人もいて、嘲笑する人もいる。
それをもう理解しているからこそ、私はまっすぐに自称内科医から視線を反らさずに正直に答えた。
「IDDMだから」
簡潔に、それだけ言うと相手は首を傾げた。
それで確信する。
コイツ、内科医じゃない。 もしそうならば詳しくは覚えていなくても略称くらい覚えていないんじゃお話にならないから。
となるとあの合コンの場にいた他の男たちの職業も偽りだったのだろうか。
確証はないけれどこのことをソッコーで真帆にメールしておかないと、後で何を言われるかわからないな、なんてことを考えてる私に自称内科医は嫌な笑みを絶やすことなく口を開く。


