待ち受けカノジョ。

奈緒の病室の前に立つ。


森田サンがいたら奈緒は喜ぶけど、オレはちょっと気まずいんだよなぁ~。


突然ドアがガラッと開いた。

「あっ!」

中から出てきた人とぶつかりそうになる。


「ス、スミマセン!」

「いえ、私こそ…」


軽く頭を下げた後、廊下を早足で立ち去るその人。


誰だろう?

小さくなる背中を、見えなくなるまで何となく眺めた。



病室に入ると、いつもと変わりなく横たわる、奈緒の本体。

おばさんはいなかった。


「お母さん、そろそろパートに行き始めたんじゃないかな。そんな休んでられないだろうし」

携帯を開いたまま、奈緒のベットの上に置く。


「ねぇ、滝山くん」

「ん?」

「さっき話してたの、どんな人?」

ああ、ぶつかりそうになった人か。

「ん~、グレーのスーツ着てて、ガッチリした体型で、白髪混じりで、コワモテの中年のおじさん」

奈緒がハッと息を飲む。

「それ、私のお父さんかもしれない。」

「えっ?お父さん?」

「うん。声が似てるような気がした」