待ち受けカノジョ。

「友美さーん、おまたせー」


夜も遅い。

入り口のドアベルがハデに鳴らないよう、そーっと店の扉を開けた。


「ああ、ごめんね、順平!遊んでた?」

「うん。もてあそばれてた」


ポケットから「ブッ!」と吹いた声。


「で、相談って何?」

友美さんは冷蔵庫から缶コーヒーを2本出して、1本をオレにポイッと投げた。

「実はさー、またオーダーが入ったんだけどね、それがやっかいなのよ」

「やっかい?」

ウエッ!このコーヒー、ブラックじゃん!にがっ!!


「8月の中頃、なんかのイベントがあるらしくて、それに着て行きたいんだって」

「へぇ~」

まさかのコスプレ?


「で、『何とかちゃんの服を作ってくれ』って言われたんだけど」

ブッ!やっぱコスプレじゃん。

「あ!そうそう、“めくるちゃん”!!」

ブホオッ!!

今度はオレが吹いた。


「ちょっと!汚いなぁ…何やってんの!」

「ごっ、ごめん!」

あわてて床に散らばったコーヒーを拭き取る。


「今大人気のアニメのキャラクターみたいなんだけど…順平、知らない?」

「あ~知らない、かなぁ~?」

知り尽くしてるけど!!


「一応ネットで調べて画像は見たんだけどね。平面じゃなくて、3Dで見てみたいのよ!」

完璧主義者の友美さんらしい。


「友達とかで詳しい子、いない?」

オレが一番詳しいけど!!

「ん、ん~?どうかなぁ~?探してみるよ」

「わぁ、助かる!見つかったらその友達ムリヤリ連れてきて!お願いね!!」

「う、うん。分かった…」