おーい
滝山くーん。
デート中すみませんけどー
メールきてますよー、友美さんから。
件名が『ちょっと相談』になってますよー。
メール見た方がいいんじゃないですかねー?
バタンと車のドアが閉まる音と、エンジンの振動が伝わってきた。
良かった、帰るんだ。
滝山くんとミナミさんって人の話し声が、かすかに聞こえる。
それから、CDから流れてくるピアノの音も。
♪That was then, this is now…
「えっ、順クンこの曲歌えるの?」
「ハイ。父ちゃんが好きで、夜いつも酒飲みながら聴いてるんです。だから、なんとなく覚えちゃって」
「へぇ、そうなんだ。店長らしいわね、“ピアノ・ソング”なんて。古い洋楽で、大人の男が昔の恋人を想って歌う詞なのよ。」
♪I play the piano for amusement…
ピアノに合わせて滝山くんが口ずさむ。
心の中にフッと入り込んでくるような優しいメロディーと、声。
これが、あの“メクルメク☆めくる”をノリノリで歌ってた人と同一人物なの!?
「遅くなっちゃったね。時間大丈夫?」
「平気です。家にいてもゲームとかしてるだけだし」
おーい、勉強しないの?
「今日は、いつもより早いくらいですよ?」
「ふふっ…そうね。本当言うとね、朝まで付き合ってもらいたかったんだ」
え、朝まで?
「オレ、いましょうか?朝まで、ずっと一緒に…」



