待ち受けカノジョ。

オレはイラついていた。

奈緒が嬉しそうに森田サンのことを訊くたびに、つい口から出てしまいそうになる言葉をグッと飲み込む。


『あんなヤツのどこが好きなの?』


病院で見たアイツの態度を思い出すと、またジワジワ~ッと腹が立ってくる。


くそ!やっぱりガマンできない!


「ねぇ、なんで…」

「会いたかったなぁ……」


えっ?

ポツリとつぶやいた奈緒の言葉に、ハッとした。


今の、奈緒の本心だ。


…そうだよ。

奈緒とアイツには、“付き合っている2人だけの世界”があるんだ。

相手にしか見せない、お互いの姿があるんだ。


オレが口を出すことじゃない。

オレは完全に“部外者”だから。



「…時間のある時は、なるべく病院に行こう?そしたら、いつかまた会えるよ」

「うん…」


ポツリと返事をした後、奈緒はあまり話さなくなった。


オレもなんとなく話しかけ辛くて、

自分の記憶の中の“森田サン”を全力で消し去ろうとしていた。