もう夜なのに街はまだ騒々しくて
電話でしゃべってるフリをしてくれてる滝山くんの声も、あまり聞こえない。
「そーだ!今日桃香ちゃんと病院言ってきたんだよ」
「え、桃香と?」
「うん。奈緒の心配してたから」
「そうかぁ…ありがとう」
私のたった一人の大事な友達、桃香。
心配してくれてたんだ。
嬉しいな…
「で、奈緒の彼氏、お見舞いに来てたよ。」
「ええっ!?森田さんが!?」
思わず大声になってしまった。
胸がドキドキする。
「ね、何か言ってた?」
少し間があいた。
「…特には、何も」
「元気そうだった?」
「んー、よくわからん」
滝山くんは、なぜかそっけない返事。
森田さんのことをもっと訊きたいのに…
でも、そうだよね。
森田さんと滝山くんは、赤の他人。
全然関係ないんだもんね。
私は一言だけ本音を漏らして、口を閉ざした。



