待ち受けカノジョ。

「別にいないよ」

「えっ!そうなの?滝山くんモテるから、絶対いると思ってた!」

ぱあっと目を見開いて、体を乗り出してくる桃香ちゃん。


「じゃあさ、この後カラオケとか行かない?」

「え?だって塾でしょ?」

「いいよ、そんなの!サボるから!」

イヤ、オレは帰りたいんだけど。


「ダメだよ、ちゃんと行かなきゃ。オレももう帰るから。奈緒待ってるだろうし」

「えっ?」

ヤベ、口がすべった!

「な、奈緒が治るまで、待ってようよ?元気になったらさ、カラオケでもなんでもみんなで行こう?」

「うん…そうだよね~」

桃香ちゃんのほっぺたがぷくっと膨らんだ。



バックを肩にひっかけ、トレイを持ってゴミ箱に向かう。

「ねぇ、滝山君!じゃあさ、これからも一緒に奈緒のお見舞い行こうよ!ね、ねっ!?」

「うん…タイミングが合えば、ね」

「ホント!?わぁーい!」


なんか…

調子狂うんだよな、この子。


なんだろう、胸の奥から湧き上がってくる、この感情。

今まで女の子にこんな気持ちしたことないんだけどな。


オレは無言で次々とゴミ箱にゴミを放りこんだ。


このモヤモヤまでグシャグシャに丸めて、ポイッと捨てられればいいのに。