病院につくまでの間

オレは桃香ちゃんに、一応「ナイショだよ」と前フリして、事故のことを説明した。

もちろん奈緒の秘密までは話さなかった。


桃香ちゃんは、ずっとうつむいたままで、言葉少なめに、ただ「うん、うん」とうなずいて聞いていた。



「あら?」

病院の廊下でバッタリ会った看護師の成田さんが、ニヤつきながらオレと桃香ちゃんを交互に見る。

何を期待してんのかわからないけど、とりあえず説明。

「奈緒の友達連れてきました」

「ああ、お友達ね。ハイハイ」

なんだつまんない!って思ってる成田さんの心、だだ漏れ。


「こんにちは…」

奈緒の病室のドアをそっと開ける。

おばさんと、その後ろに立っているのは…

知らない男。


「ああ、桃香ちゃん!久しぶりね」

おばさんがニッコリと笑った。

桃香ちゃんは、顔を硬直させながらおばさんに言う。

「お久しぶりです、おばさん。奈緒は…どうですか?」

「うん、あいかわらず意識がないのよ」


フラフラと奈緒の方に歩み寄る桃香ちゃん。

「奈緒…?」

桃香ちゃんの声は、かすかに震えていた。


友達がこんな姿になってれば、そりゃショックだろうな…