「ホラ、あそこにいるのがめくるちゃんだよ」


滝山くんが指をさしたのは、例の唯一きれいな棚の上。


ああ、あのフィギュアがそうなのか。


「そして、これがアニメ主題歌“メクルメク☆めくる”!」

いつの間にかCDを持ってドヤ顔してる滝山くん。

そんなの自慢したって全然興味ないってば!

「ちなみに、初回限定版!!」

だから、どうでもいいってば!


テンションが急に落ちた、滝山くんはショボンとうなだれる。

「で、なくしたのは、幻の“レアめくストラップ”」

「ストラップ?」

「うん。アキバにしかないガチャポンで、100個中1個しか入ってないというウワサの物なんだよ」

そんなのがあるんだ。

恐るべし、オタクの世界。


「これを手に入れるために、何人もの“めく友”が次々に破産したという…」

みんなどんだけ買ってんだ!

「オレ、28個目で出たんだよ!1万円内で出たなんて、奇跡なんだ!」

アンタもどんだけ買ってんだ!

「なのに…いなくなっちゃった!わあああん!!」

ベットにうつぶせでバタ足してる、3歳児みたいなめくるオタク。


まったくもう。

捜索願でも出せば?