「いやん!またスカートめくれちゃったぁ!」
つけっぱなしのテレビから、脳ミソを直撃するようなキンキン声のセリフが聞こえる。
はぁ?
どんなアニメ見てんだか。
汚部屋に差し込む日が傾き、やがて薄暗くなってきた頃に、
カチャ…
がっくりと肩を落とした滝山くんが戻ってきた。
「ちょっと、どこ行ってたの?」
うなだれたまま私の前をフラフラと通り過ぎ、ベットにパフッと倒れこんだ滝山くん。
「ねぇ、メールなんだけどさ、私の友達の桃香が…」
「うわああああん!!」
えっ!?
「ない!ないよぅ!うわああん!!」
両手で頭を抱えながら、ゴロゴロ転がって悶絶している。
「な、なんかなくしたの?」
動揺する私に、涙目の滝山くんが言う。
「うん、オレの命より大事な物…」
そんなもん、この世の中にあるかい!
「で、何なくしたの?」
「めくるちゃんストラップ」
「え、なに?めくるちゃんって」
滝山くんが急にガバッと起き上がった。
「知らない!?“めくって☆めくるちゃん”!今最も熱いアニメなんだけど!」
「知らないよ!私アニメとか見ないし」
オタクでもないし。