病院のそばの並木道を駅に向かって歩く。


携帯を耳にあてて、いかにも“誰かと話してます”風のオレ。


人目を気にしてやってる事だけど、

なんだ?この小芝居。


「滝山くん。ケガはどう?」

「うん、全然へーき。奈緒は?」

「私は大丈夫。元気だよ!ってゆーか、いきなり呼び捨て?」

「ん?女の子は基本的に呼び捨てだけど。なんか問題ある?」

「いや、ないけど…」


オレは、さっきからずっと気になっていることを切り出した。

「ねぇ、あのさ。おばさんに言わなくてよかったの?」

「……」


しばらく流れた沈黙をかき消すように、バイクが爆音をたてて通り過ぎて行った。


「うん…。お母さん、心臓が弱いんだ。だから、こんな娘を見たらきっと倒れちゃう」

「でも、あのままだったら、おばさん精神的にヤバいよ。ちゃんと言った方が…」

「あっ、ねえ!今日、晴れてる!?」

「え?」

急に話題を変える奈緒。

「う、うん。晴れてるよ、ホラ」

景色が見えるよう、携帯のディスプレイを
外に向けた。


街路樹の新緑が初夏の太陽の光を受けて、キラキラと輝いている。