昨日、葵と千夏にいじめられたオレは、朝から気合い入れて部屋を片付けている。


「よし!こんなもんだろ」

額に流れる汗を腕でぬぐった。

「だいぶきれいになったね!」

机の上に置かれた奈緒が、パチパチと拍手している。

「奈緒が教えてくれて助かったよ!ゴミの分別なんて全然分かんねーもん」


部屋の半分をしめている、大量に積み重なったゴミ袋マウンテン。

「後は袋の口を縛って捨てるだけだ」

「掃除機もしっかりかけてね!」

あら、掃除機かけるの忘れてた。

「い、言われなくてもわかってるよ!そんなの当たり前じゃん!」

どーだか!という顔でオレを見る奈緒。


「おーい、順平ー!」

ドアの向こうから聞こえる葵の声。

「部屋、片付けたー?」

「うん。もう臭くないよー」

そーっとドアが開いて、葵がつま先歩きで入ってきた。

「あ、ホントだ。ちゃんと床も見えるようになったじゃん」

「やればできる子だからね、オレ!…あれ?千夏は?昨日泊まったんじゃないの?」

「ああ、千夏ちゃんは朝っぱらチャリで帰ったよ。葵も、もう帰るね。今日の夜打ち合わせあるし」

「そっか」

「じゃ、バイバ~イ!」

今度は普通に足をつけて歩き出す葵。


「あ、ちょ、ちょっと…!」

オレは葵を引き止めた。