待ち受けカノジョ。

「あーあ、エセ彼氏じゃなくて、ホントの彼氏欲しいな~!」

オレん家に戻り、コテコテに塗った化粧を落としながら葵がつぶやいた。

「彼氏いないの?」

オレは例のごとく、また冷たいお茶を作らされている。

「いないよー、好きな人はいるけど」

いるのかよ!

「じゃ、早く付き合えばいいじゃん」

「まだムリー。だってその人、友達の彼氏だし。別れるまで待ってんだ!

まぁ、だいぶヤツに仕掛けてるから、別れるのも時間の問題だけどね…」

フッフッフと含み笑いをしながら、黒くなったメイク拭き取りシートをポイッとゴミ箱に投げる葵。

コワ!この女、怖っ!

「だから順平とのエセ恋愛も、ヤツをじらすための作戦なんだ!」

「え、オレ巻き込み事故じゃん!」

お茶のグラスをテーブルに置くと、手鏡から顔をあげた葵がオレを見上げた。

えっ?誰?この人。

まゆげは?

大きい目は?

ピンクの唇は?

すっぴんの葵がニヤッと笑った。