待ち受けカノジョ。

「ねぇ、今日の滝山君、なんか冷たくない?」

大量の荷物を持ってちょっと早足気味のオレの後ろで、桃香ちゃんが言う。

「え?別に、そうでもないよ」

ただ他の事で頭がイッパイなだけ。


「奈緒のお見舞いだって、一緒に行こうって何度もメールしたのに全部断られちゃったしさ」

「ああ、ゴメン。タイミングが合わなくて」

そういえば、奈緒に『一回は行ってあげて』って言われたっけ。

結局一度も行かなかったけど。


「あのさ、桃香も行きたい所があるんだけど…付き合ってくれないかな?」

悲しそうな目で見つめてくる桃香ちゃん。

「分かった。それ終わったら帰ろうね」


桃香ちゃんに案内されながら歩くと、大きい道からはずれ、人がだんだん少なくなってきた。

どこ行くつもりだろう。

荷物は重いし、暑いし、できれば早く帰りたいんだけど…


「ここだよ」

立ち止まった桃香ちゃんの横にあったのは、

ラブホの入り口。


「え?ちょ、ちょっと!ここ!?」

焦りまくるオレに、桃香ちゃんは平然と言った。

「うん、ここ。入ろ?」

「イヤ、待って!ムリ!」

桃香ちゃんが後ずさりするオレをグイグイ押す。

「大丈夫!昼はサービスタイムで安いから!」

「イヤ、そーゆう問題じゃなくて…」


自動ドアが左右に開いた。

勢いに負けて、結局中に押し込まれるオレ。