待ち受けカノジョ。

「ねぇ、滝山くん。平石君の言ったことって、ホントなのかなぁ」

やっぱ奈緒に聞かれちゃってたよね…

「クラスの子も『サセ子』って言ってたし」

「いや、あのね」

言葉につまるオレ。

「平石は、嘘つくような性格じゃないけど…」

奈緒がため息をついた。

「みんなと平石君の言う通りだったら…。私、桃香がそんな子だって知らないまま、ずっと友達だったって事だよね?」

小さく首を振るオレ。

「でも、どんなに友達だって、秘密にしてる事だってあるよ。もしかしたら、言いたくても言えなかっただけなのかもしれないよ?」

口をへの字に曲げる奈緒。

「…そうだよね。私だって、この携帯の事を桃香に言ってないんだもんね」

「うん。誰でも心の中に、立ち入って欲しくない場所があるのかもしれない」


それから、奈緒は口を閉じてしまった。

オレも携帯を握ったまま、黙って家に向かって歩く。


「…あのね」

「うん」

真剣な表情で、必死にオレに訴えかける奈緒。

「いつもはね、桃香は普通の子なんだよ?明るくて元気で優しい子なんだよ?ホントに!!」

「奈緒…」

必死で桃香ちゃんをかばう奈緒が、なんだか可哀想に思えてきた。

桃香ちゃんは、森田とさえも…


「私は桃香を信じるよ、そんな子じゃないって」

奈緒の強い目の力に、オレは何も言い返せない。

「もし、噂通りだったとしても、私と桃香の友情には関係ない」

「…どんなことがあっても?」

奈緒、この質問は確認の意味だよ?

「うん。たった一人の友達との仲を、私は壊さないよ、絶対」

その言葉、忘れるなよ。


「よし!家に着いたし、この話終わり!」

オレは思いっきり家のドアを開けた。


「私お腹すいちゃった!充電してね!」

奈緒に笑顔が戻る。