待ち受けカノジョ。

胸のポケットから小さい黄緑色の箱のタバコを出し、火をつけたじーちゃんが話し出す。


「なんで生まれたかーなんてのは、棺桶に片足つっこんでる俺でも分かりゃしねーよ。そんなのに、いちいち理由なんかねえんじゃねーか?」

「理由が、ない?」

「おうよ。生まれてきたのは、ただの偶然だ。魚だって虫だってそうさ。理由なんて、ない!!たまたま生まれちまったのさ」

「じゃ、他の誰でもなく、オレが父ちゃんとお母さんの間に生まれてきたのも?」

「そうさ。誰が誰の所に生まれてくるなんざ、決まってるわけじゃねえ。偶然だ」


偶然かぁ…


「でもよぉ、その偶然から、理由を探すんだよ」

フーッと吐き出したタバコの煙が流れる。


じーちゃんが真顔でオレの目をジッと見た。

その顔に深く刻まれたシワは、長い人生を歩んできた証。


「いいか、ペイ太郎。これから、いろんな事があるぞ。悲しいことも、苦しいこともあるんだ。でもよ、『なんで生まれたのか』って疑問を、忘れちゃならねえ」