待ち受けカノジョ。

悠人のオヤジさんの旅館。

それは、日本家屋を売りにしていて、和の雰囲気が好評らしく、8月いっぱい予約で埋まっているそうだ。


ここまで歩きながら、悠人が話してくれた。


到着すると悠人の言う通り、スタッフ全員が観光客の対応に追われてバタバタしていた。


「いいの?一部屋タダで借りちゃって」

「ああ、いいのいいの。この部屋はお一人様用で、あんまり予約入らないから。オヤジにも許可とってるからさ!」

「なんか悪いな」

思わず体をすぼめてしまう。


「ま、ゆっくりしてってよ!俺メシもらってくるわ!」

ふすまをスーッと閉めて部屋を出て行く悠人を見送った後、オレは深呼吸した。


畳のいいにおい。

木の柱に、障子に、和風の照明に、ざぶとん。

普段マンション暮らしのオレには、めちゃめちゃ癒される空間だ。


「だぁー!疲れたー!!」

畳の上にゴロンと寝転がって、どーんと大の字になる。


ん~、ヒンヤリした畳が気持ちいい!