待ち受けカノジョ。

言ってしまったんだ、ミナミさん。

ずっと押し殺していた、自分の本当の気持ちを。


父ちゃんのことが、好きだって。

傷つくのを覚悟で。



オレは走った。

ヤミクモに走りまくった。


夏の夜の街はやたら騒々しく、すれ違いざまに酔っ払いとぶつかった。

「おい!どこ見てんだよ!」

「…すみません」

「アレ?泣いてんの?オマエ!」

酒臭いおっさんが絡んでくる。

オレはまたダッシュで走り去った。



泣いてない。

泣くワケがない。

ミナミさんは、オレとは関係ない人。

愛されてもないし、愛してもない。

分かってたハズだ。


なのに…

なんだ?この感情。


血を吐きそうなほど、胸が震えて痛い。





気がつくと、多摩川の河原だった。

サラサラと水の流れる音が聞こえる。


夜空を見上げながら、一度だけ深呼吸した。

頬を伝って流れるのは、涙じゃない。


ただの汗だから…