待ち受けカノジョ。

「じゃあね、順クン」

「送ってもらって、ありがとうございました」


車から降りるのは、いつも家からだいぶ離れたこの場所。

人通りが少ないし、この時間は真っ暗だから、誰にもバレない。


「おやすみ」

エンジンをかけた車の窓から、ミナミさんが顔を出す。

「おやすみなさい」

デート帰りのお約束、“おやすみのキス”。


車が動き出すと同時に、オレはくるっと背を向けた。

お遊びタイム、終了――


ミナミさんは、絶対オレに『好き』とは言わない。


だからオレも、本心は…言わない。



空は気持ち悪いほど、満点の星。


さ、帰ろ。

今頃奈緒はハムスターかな?



「ただいまぁ~」

小声で言いながら、携帯をそーっと開いて覗く。


えっ?

画面が真っ暗。

えっ?どういうこと!?

普段だと、これは充電切れのパターン。

でも充電器は差していったハズ。

っていうか、奈緒は!?

奈緒はどうなってる!?


ふと充電器を見ると、ちゃんと差さっていないことに気付いた。


あっ!もう、なにやってんだよ、オレ!


急いで入れ直してオンのボタンを押し、パッと明るくなったディスプレイを凝視する。


奈緒…

奈緒は…!?