月夜が桜の木を照らす。

その光に反応するかの様に桜の木が淡く、光を放つ。

そして蝶の姿がそっとぼやけて光の中へと消えていく。

「桜・・・蝶は行ったのね。」

瑠璃は愛娘の姿を一人の巫女として見つめる。

「ええ。彼女の運命が今、回り始めたのよ。」

桜がそっと瑠璃のそばに舞い降りる。

「大丈夫かしら?」

すこし心配げな声。

そっと刹那が瑠璃の肩を抱きしめる。

「大丈夫じゃよ。わしらの娘だから、心配せんともうまくやるさ。」

「そうね、信じましょう。あの子の可能性を。」

私は刹那の言葉に大きく頷く。

「そうよ。なにかあれば私が導くわ。」

「よろしくね?桜。」

「ええ。まかせて!」

静かに夜は明けていった。