誠の桜に止まる蝶

屯所に帰ると笛の音が聞こえた。

音のするほうへ行くとどうやら庭から聞こえるらしい。

そっと覗くと木に座りながら蝶が笛を吹いていた。

そして、その周りには淡い炎がちらほらと浮かんでいた。

狐火というものだろうか?

そして不意に吹くのをやめるとくるりとこちらを見つめる。

蝶「おかえりなさい。総司」

総「気づいていたの?」

僕はそっと木まで近づく。

蝶「ええ。今は狐だから耳が特にいいのよ。」

総「そっか、その光は?」

蝶「狐火よ。今夜は月がないから」

今夜しか出せないんだけどねといたずらっぽく微笑む。

総「本当に九尾の狐、刹那様の血筋なんだね」

蝶「ええ、そうよ。私が怖い?」

総「え?」

すこし悲しげに蝶は微笑みを浮かべ、こちらを見つめる。

蝶「だって総司、なんだかいつもと様子が違うんだもん。化け物だと思った?」

総「いいや、きれいだよ。どんな蝶も。ただちょっとね」

蝶「ちょっと?」

不安げな瞳で言葉の続きを促す。