「じゃあ蝶ちゃん、もしかして帰る場所ない?」

優しく問いかけると迷子のような顔で

「あ、はい・・・」

と弱弱しくつぶやく。

今にも泣きそうなそんな瞳をしている君をほっておけなかった。

「じゃあ、屯所においでよ。」

「えっでも・・・・」

蝶ちゃんはどうしようという顔をしていた。

ああ、女人禁制を気にしているのかな?

「近藤さんに話してみるよ。近藤さん土方さんと違って情に熱い人だからきっと蝶ちゃんのことも受け入れてくれるよ。」

「おいっ。総司。俺と違うってどういうことだ。」

いちいち土方さんが突っ込みを入れてくる。

「本当のことじゃないですか。うるさいですよ土方さん。」

「なっ!総司てめえ!」

「はいはい。とりあえず行きますよ。」

「っ後で覚えてやがれよ・・・」

拗ねたように土方さんがつぶやく。

「さあ、蝶ちゃん降りておいで?」

「はいっ!」

嬉しそうに返事をすると本当の蝶のように舞い降りる。

そのあまりの美しい姿に俺と土方さんは言葉を失う。

「ん?お二人ともどうしたんですか?」

不思議そうに尋ねてくる蝶ちゃん。

「い、いや。なんでもない。」

「う、うん。さあ行こうか?」

俺らはなんとか取り繕う。

「?はい!」

こうして3人で歩き始めた。


これが僕たちの物語の始まりだ。