「…陽炎」



ぽつり呟かれた言葉は颯人のもので。
その低い響く声に背筋がゾワリと粟立った。



「……」



颯人の鋭い目は私を見据えたまま逸らされることはない。



その探るような視線から私も逸らせなくて、ただその漆黒の瞳を見ていた。



陽炎…

かげろう…?



ただその漆黒を食い入るように見つめていた私は、頭の中でその発せられた言葉の意味を考えていた。



両隣のタクも修も、目の前の正宗も司もただ私の動向を見ていて、視線を感じる。



だけど考えても、考えても、颯人の発せられた言葉の意味はわからなくて、私の眉間にはだんだんと皺が寄せられていた。



「…陽炎」



もう一度颯人から発せられた言葉。
まだ視線は交わったまま。