その人物は私の目の前に跪いて、今し方ぶつけた頭をさすってくれた。



「俺、荒井正宗(アライマサムネ)…正宗でいいよ。ちなみにそこのオレンジは安芸拓人(アキタクト)その隣が光岡修(ミツオカシュウ)」



長めのダークブラウンに黒縁メガネをかけた彼は、タクや修より見た目がソフトだった。


「…佐伯心です」


その紳士的な対応に、差し出された手を握り返して、気付けば自分も自己紹介をしていた。
後ろで「俺らはオマケかよ」と悪態つくタクの事は完璧に無視した。



「心ちゃんね。で、ここに連れてきたのにはワケがあるんだけど…」



そこまで言った正宗はチラリと自分の後ろを指差した。



「…」


「…あっ!」



正宗の後ろ…私の向かいのソファーの後ろのデスクに座るのは、今朝の金メッシュ。



私がバックレた、相手…



「…テメェよくも逃げたな?」



射るように私を見据える彼。
…あれ?私、この目見たことがある…?



正直、少し怖いと思いつつも「今朝はありがとうございました」お礼を言う。



タクが「テメーそんな口もきけんだな」ってかなり失礼な事を言っていたけれど、そこは無視しておいた。